小説やアニメの物語シリーズといえば、難しい言葉や西尾維新先生の言葉遊びがありますよね。
ニュアンスでなんとなくこういう意味かなと想像はできますが、正しい意味と意図がどうしても知りたくなったため、小説中から気になる言葉達をまとめました。
少しでも気になった言葉を挙げていくと、かなりのボリュームになってしまいました。そこで劇場版にあやかって3つに分けて投稿します。
ここでは第一作目〈鉄血編〉部分について、私の見解を交えて言い換えや解説をしていきます。
傷物語について
書籍情報
傷物語 2008年5月7日刊行
著者:西尾維新
出版:講談社(講談社BOX)
映画情報
傷物語〈Ⅰ鉄血編〉 2016年1月8日公開
制作:シャフト
小説で言うとchapter1からchapter6までの内容
シーンで言うと暦が忍野の提案を受け入れ、戦う決意をした場面までです。
言葉の意味・言い回しの解説
登場人物はそれぞれ、次のように略します。
- 阿良々木暦→暦
- キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード→キスショット
- 忍野メメ→忍野
- 羽川翼→羽川
chapter 001 10~13ページ
ただの外連味や言葉遊びで言うのではなく、僕は真剣にそう思うのだ。
10ページ
外連味…はったりや誤魔化しをすることを指します。
阿良々木暦が語る”一連の事件”の始まりと終わりについては、誤魔化しではないが確かではない。ということになりますね。
観測者としての僕は、はなはだ不適合で。
12ページ
はなはだ不適合…このとき、怪異を観測するのが暦では、非常に当てはまらないという意味になります。
chapter 002 13~34ページ
そのとき僕は、通っている私立直江津高校の付近を、漫然とそぞろ歩いていた。
13ページ
漫然とそぞろ歩いていた…とりとめのない様子の漫然と、自分の気の向くままに歩くそぞろ歩きがつなげられた一文ですね。
そぞろを漢字表記にすると 漫ろ になりますので、このとき暦は特に用もなく、かなりなんとなく歩いていたようです。
そのあとにある「怪物みたいな大型ルーキー」は神原駿河のことです。
前日譚として書かれただけあって、キャラクターの以前の様子が描かれているのはファンには嬉しいことですよね。
(略)あっという間に落ちこぼれていっという間に落ちぶれてしまった僕などとは雲泥の差というか、ある意味対極的な存在である。
15ページ
雲泥の差…羽川と暦の対比です(笑)同じ直江津高校の生徒としては、かなりの違いがあることを表す諺です。
(略)益体もない話にちょっとだけ付き合ってあげるくらいのことは、お安い御用だ。
25ページ
これはニュアンスでわかりそうですね。益体もない話はくだらない話 という理解で良いでしょう。
作らないんじゃなくて作れないんだ、と、ここで率直に答えるのも憚られた。
28ページ
憚られる は遠慮や躊躇うときに使う言葉です。つまり暦は本当のところを隠して、強がった というか格好つけたんです。
今度は僕はたじろいだ。
「生憎、僕は宿題もない春休みにわざわざ自主的に勉強するほど、奇特じゃないんだ」
31ページ
このシーンを言い換えるならこうです。
春休みに勉強をする優等生にひるみ、褒めつつ卑屈になっている男子高校生の姿が、そこにはあった。
怪訝そうな思いがそのまま羽川に伝わったのだろう、(略)
32ページ
怪訝はよく聞く言葉ですよね。たとえば、怪訝そうな顔をされた だと不思議そうな顔 となります。
chapter 003 34~54ページ
僕の心を苛む。
36ページ
苛む…苦しめるという意味です。羽川に対する罪悪感に苦しめられています。
そのドレス
元はさぞかし立派な、格調高い服だったのだろうけれど、今はもう、まるで見る影もない。42ページ
気品のある高貴なドレスだったと見て取れるが、いまはボロボロで失われてしまったようです。
何せ『彼女』は、疲労困憊の体を呈していた。
42ページ
簡単にすると、キスショットは疲れ苦しんでいる状態に見える ですね。体は見た目。呈するは状態を表す。ですから、ここは西尾先生の言葉遊びですね!
そんな切断面の状態など、この場合は些事だ。
43ページ
このシーンでは ささいなこと という意味の些事です。傷口の状態など気にしていられなかったんですね。
それでも高飛車に構えて
言った。45ページ
高圧的な態度をとってキャッチフレーズ込みで名乗ったキスショット。
君子危うきに近寄らず、だろう?
虎児もいないのに虎穴に入ってどうする?
47ページ
君子危うきに近寄らずは 賢いものなら危険を避ける という意味になります。暦が賢いかと問われるとyesとは言えませんが、彼の心の声です(笑)
次は虎穴に入らずんば虎子を得ずのことですね。虎子はメリットです。
つまり、メリットもないのに自ら危険に飛び込んでどうする?となります。
臆面もなく。
48ページ
臆面…気後れした顔色を指します。余裕もなくなり躊躇もなく叫んだんですね。
chapter 004 54~72ページ
その床は、リノリウム。
54ページ
リノリウムってなんだよ!と私は思いました(笑)
あなたは初見でわかりましたか?
天然素材から作られた建築材料のひとつで、病院の床材などに使われるようです。
妹達の不行状を思えば、可愛いものかもしれないけれど……、(略)
59ページ
不行状は行いが良くないことです。ファイヤーシスターズはどんなことを日々おこなっているのやら…
少女にあるまじき権高な目つきで、(略)
60ページ
権高は先ほどあった「高飛車に構える」と同じで、相手を見下す高圧的な態度ですね。
まさしく後悔先に立たずである。彼女に血液を絞り取られた僕は
極めて荒唐無稽なことに、吸血鬼と化していた。63~64ページ
後悔先に立たず…終わったことは後悔しても取り返しがつかないという意味の諺です。
また荒唐無稽は現実味のないことですね。
chapter 005 72~86ページ
啞然となった。
73ページ
啞然…想定していなかったことに驚き、呆れて言葉を失う という意味があります。
キスショットを瀕死にまで追い込んだ3人と戦わなければいけないと知り、言葉に詰まった様子です。
イニシアチヴは、完全にあの女に握られているのだ。
78ページ
initiativeは日本語で主導権です。主人と従僕の関係ですから、握られていて当然のことですね。
どうまかり間違ったところで、(略)
79ページ
間違うことを強調するとまかり間違うとなります。
このとき他の事がすべて嘘だったとしても、専門家の話だけは真実だろう ということですね。
皮算用のようなことを言った。
83ページ
皮算用はまだ実現しないものを期待して計画することです。キスショットの退治に加えて、暦の退治でも褒賞がもらえるだろう と期待しているんですね。
chapter 006 86~102ページ
たとえサイケデリックななアロハ服を着ていようとも。
86ページ
サイケ調ファッションと言いますよね。そのサイケです。
psychedelicは形容詞で、極彩色で奇抜な模様を指します。そんな服装であっても似合うのが忍野の格好良さである。
まあ、義を見てせざるは勇なきなりってね。(略)
88ページ
義を見てせざるは勇無きなりはすべきことだと知ってそれをしないと、勇気のない人だ という諺ですね。忍野は善意でキスショットを助けています。
まあ、妖怪変化のオーソリティだと思ってくれりゃいい(略)
94ページ
authorityは日本語で権威者なので、怪異の専門家ですね。
「もう少しありていに言うと、好きじゃないんだよね。」
94ページ
ありてい…ありのまま
忍野は「具体的に述べると、退治は好きじゃない」です。
(略)どこまでも不遜なのである。
95ページ
簡単にすると態度が生意気だということです。500歳の吸血鬼を「あの子」や「その子」と呼ぶ忍野は不遜な態度です。
見た目は完全に少女ですからね、その子と呼ぶのもわからなくはないですが…
(前後略)渦中の者は、あくまでも自らの手で火中の栗を拾う必要があるのさ
97ページ
渦中の者は事件の中心人物ですから、暦自身です。
火中の栗を拾う…自分にメリットがないのに危険を冒すことを表す慣用句。
当たり前のように言っていますが、事件をおこした本人がそれを解決する必要がある。と厳しい言葉です。
おわりに
傷物語〈鉄血編〉の言葉と言い回しの解説でした。
言葉の意味をしっかりと理解し、同じファンとして傷物語及び物語シリーズをもっと好きになっていただければ、幸いに思います。
〈熱血編〉に続きます。
ありがとうございました。
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