暦物語 第一話「こよみストーン」で使われている、言葉や言い回しの意味を解説します。
難しい言葉や言い回し、言葉遊びについてピックアップしています。
暦物語
暦物語
著者:西尾維新
出版:講談社
刊行:2013年5月20日
こよみストーン
暦物語9~49ページ
登場キャラクター
阿良々木暦・羽川翼・忍野メメ
chapter 001
(前後略)僕には分不相応な進学校である私立直江津高校に向かう
9ページ
分不相応
置かれている身分や能力にふさわしくないことです。ちなみに”不相応”だけだと、ふさわしくないことになります。
あっという間に落ちこぼれた暦は、不釣り合いな進学校に通っています。
(前後略)つまりは少なくとも建前の上では、
9ページ
建前
話の内容を考えると、意味は「表向きそのようになっている方針(原則)」になります。建前でも通じるのですが、この場合は建て前とするほうが意味が通じやすいようです。
(前後略)抽象的な意味さえ茫洋として見出せていないというのが、
9ページ
茫洋
広々として限りのないさま。また広くて見当のつかないさま。
(略)しからばむべなるかなというものだ。
10ページ
しからば(然らば)
それならば・そうしたら
むべなるかな
それはもっともだ・いかにもその通りだ
chapter 002
僕程度の足手まといがいたところで歯牙にもかけない優秀さは、知らず周囲をスポイルする(略)
12ページ
歯牙にもかけない
無視して問題にしない。
スポイル(spoil)
日本語で「だめにすること」です。特に、「甘やかすなどして人をだめにすること」を指して使わる言葉です。確かに作中では、暦は羽川に頼りっきりですよね。
(前後略)みたいな剣呑極まる雰囲気で、
12ページ
剣呑
危ないさま・また不安を覚えるさま。
受験生だというのに懇親会なんて…と皆がピリピリしているようですね。
「都市伝説。街談巷説。道聴塗説
」14ページ
- 都市伝説…現代の都市で生まれ、広く口承される根拠のない噂話。
- 街談巷説…世間で流れている根拠のない噂。
- 道聴塗説…世間のいいかげんな噂。
物語シリーズではこれら3つの言葉がたびたび登場しますが、どれもが根拠のない噂話という意味なのです。3つも並べているのは言葉遊びなんだと思います。
情報過多な今の世の中に反旗を翻す、(略)
16ページ
反旗を翻す
権力や権威に逆らう・謀反を起こすこと。
こういう意図があるわけではないが、情報通を気取りたくないという暦の考えです。
chapter 003
(前後略)そのために僕はクラスの副委員長という不似合いな肩書きも甘受しているのだが……、
21ページ
甘受
やむを得ないものとして受け入れること。
羽川にお礼ができないかと考えて副委員長を務めて(?)います。
まあ……、人口に膾炙するっていうのが怪異のバロメーターなんだとすれば、(略)
22ページ
膾炙
広く世間に知れ渡ること。
だけどね、と羽川は嘆息する。
24ページ
嘆息
嘆いてため息をつくこと。
(略)霊験あらたかな石のように感じられもする。
24ページ
霊験あらたか
神仏が祈願に応じて示す不思議な効験が著しいこと。
chapter 004
もっとも、そこにいささかの脚色を付け加えなかったわけでもないが。
27ページ
脚色
話を面白くしようと、事実に枝葉を付け加えること。
こういうところが阿良々木暦らしいですね。よく話を盛っています。
なんだか言えば言うほど、馬脚を顕していく感じだった。
29ページ
馬脚を顕す
一般的には「馬脚を露す」(”現す”でまかなうこともある)と書き、隠していた悪事があらわになるという意味になります。
ちなみに「顕す」だと”すぐれた行為などを人目にはっきりとわかるように示す”になるため、馬脚を「顕す」という使い方はされません。
(略)取らぬ狸の皮算用というものだろう。
35ページ
取らぬ狸の皮算用
「捕らぬ狸の皮算用」とも書き、まだ手に入るかどうかわからないものを当てにして、計画を立てることを意味します。
悪く言えば、忍野は聴いた話で儲けようと考えているんですね。
僕が渡したノートをためつすがめつ見ながら、忍野は僕の言葉に反応する。
38ページ
ためつすがめつ
いろいろな方面からよく見ることです。
chapter 005
怖気が走る。
44ページ
怖気は字の通り、怖いと思う気持ちのことです。
羽川が受験前に高校のカリキュラムを調べていたことを知り、暦が怖がっています。そういえばたびたび羽川を怖がっていますね。
chapter 006
(略)祠を破壊してしまった自分の行為がうしろめたくもあった。
48ページ
うしろめたい
自分が悪いことをしたと感じる・気が咎めることです。
おわりに
「こよみストーン」の解説でした。
正しい意味を理解して〈物語シリーズ〉をもっと楽しみましょう!
ありがとうございました。
Comments